湯治は効果なし?効能や期間など分かりやすく解説

湯治は効果なし?効能や期間など分かりやすく解説

何かしらの病気をされた方の中には「湯治」について興味を持っておられる方も多いかと思います。

「ただ温泉に入ること」と混同されやすく、それぞれの違いがよく分からないと疑問に感じる方は多いですが、それぞれには大きな違いがあります。

また、湯治は「効果なし」といった声があがることも少なくありません。健康への意識が高い方にとって、興味深いテーマでしょう。

そこで、今回は湯治の概要や具体的な効能・効果、必要な期間などについて詳しく解説していきます。

湯治とは

湯治とは

そもそも湯治とは何を指すものなのでしょうか。まずは、湯治の概要について詳しく解説していきます。

現代における「湯治」

湯治は、もともと病気や怪我を治すために温泉に入ることを指していました。かつては医学が発展していなかったため、温泉で身体のトラブルを治していたのです。

医学が発展した現代では、病気や怪我の際には病院に行く方が増え、あえて温泉で治すといった選択をする方は減少しました。

しかし、今でも地域によっては積極的に湯治を行う方が多い場所もあります。島根県の三朝温泉や秋田の玉川温泉は、湯治を行う場所として有名な温泉地です。

湯治の方法

湯治を行う方法は、とてもシンプルです。15分程度温泉に浸かるのを1日で3回程度繰り返すだけです。入浴していない空いた時間は、部屋で身体を休めたり、街を散策したりと自由に過ごしても問題はありません。ただし、体に極端に負担がかかるようなことは避けましょう。激しいスポーツなどは湯治を行う日には避けておいたほうが無難です。

湯治の歴史的と陶磁文化の背景

湯治は奈良時代にはすでに人々の生活の中にあったと考えられています。しかし、当時は権力のある一部の人しか行えなかったとされていて、有名な武将や武家が中心に湯治を行っていました。

庶民の間でも湯治を行うようになったのは、江戸時代の頃です。当時、産業の中心であった農業の閑散期を利用したり、旅のタイミングを活用したりして、各地の温泉地に寄って湯治を行っていたといわれています。現在では、温泉に行くことは旅行の一環としてのイメージが強いですが、当時は病や怪我を治すための意味合いが強かったのです。

湯治に期待される効果

湯治に期待される効果

湯治を行うにあたって、気になるのがその効果ではないでしょうか。

ここからは、2つの効果について、詳しく解説します。

自然治癒力を高める効果

期待される効果として、まず挙げられるのが自然治癒力の向上です。温泉には、薬や治療などの医学の力に頼るのではなく、本人の持つ力だけで心身が抱える問題を解決できるよう促す力があります。

具体的には、細胞を活性化させたり、免疫力を向上したり、外部のストレスに強くなったりする効果が期待できるとされています。自然治癒力を向上させることで、さまざまな病気に対抗しやすくなったり、回復ペースを早めたりすることが可能です。

逆に自然治癒力が低いと「病気が治りにくい」「病気がちになりやすい」「怪我が回復しにくい」といった不便な状況に陥ってしまうため、湯治は私たちの体にとって必要なケアといえます。

とはいえ、極端に重い疾患や深刻な状態まで進んだ病気に対しては劇的な効果は期待しにくいため注意してください。あくまでも、慢性的な疾患や関節などの痛み、怪我などに関しては効果が高いことを覚えておきましょう。

転地効果(リフレッシュ効果)

湯治には、転地効果が期待できます。転地効果とは、普段の生活の中にはない空間に足を運ぶことで得られるリフレッシュ効果のことです。自宅のお風呂や通い慣れた銭湯などではなく、あまり足を運ぶことのない場所でゆっくりと過ごすことで気分転換につながります。

実際、新しい場所へ足を運ぶだけでも、新鮮な気持ちになったり、適度な刺激が得られてポジティブな気持ちになったりしたことのある方は多いのではないでしょうか。

湯治の効果は主に、身体的な部分への効果が主に注目されがちですが、自然治癒力を高めつつ、心の健康も促進することができます。

「最近ストレス解消ができていない」「ネガティブな気持ちになりやすい」など、メンタル面の不調が気になる方に効果的といえるでしょう。

湯治に必要な期間

湯治に必要な期間

温泉での療養は、1回の入浴でも効果は十分に期待できるといわれています。しかし、単純に入浴を楽しむものではなく、症状の緩和や不調の改善などを目的として行うため、より効果が期待できるのが特徴です。とはいえ、一定の期間を要するため、具体的にどれくらいの期間を目安にして行うべきかを知っておく必要があります。

そこで、本項からは、湯治に必要な期間について解説します。「どれくらい湯治を行えばいいのか」で迷ったときには、ぜひ参考にしてみてください。

湯治に必要な日数「一巡り7日、三巡り21日」

湯治に必要な期間は、個人差があるうえに、どのような状態を目指しているのかによって異なりますが、「一巡り7日、三巡り21日」といわれています。1回の湯治1巡りを7日間としてとらえ、3巡することを基本にする考え方です。つまり、2〜4週間程度行うことが多いです。1か月弱の期間を湯治に費やすことで、心身の調子が大幅に改善されるといわれています。

とはいえ、日々忙しい方にとって、2〜4週間の期間を確保するのは難しいものでしょう。湯治は最低でも1週間以上が望ましいとされています。大型連休を活用したり、職場の有給休暇を活用したりすれば、1週間であれば期間を確保しやすいのではないでしょうか。

現代人向きの「プチ湯治」

何かと忙しく、湯治のための時間を確保できない方におすすめなのが「プチ湯治」です。通常の湯治とは異なり、1か月弱もの間、温泉への入浴を繰り返す必要はありません。

プチ湯治は、2〜3泊の短期滞在で湯治体験を行うことを指します。数日のみの滞在で済むため、連休を活用したり、休日と有給休暇をうまく調整したりすれば都合をつけやすいのが魅力です。

短期間ではあるものの、免疫力の向上やストレス解消、疲労回復などの効果は十分に期待できます。

湯治をする場合の温浴回数

温浴回数は1日に2〜3回が目安です。たくさんの回数を繰り返したからといって心身のトラブルの改善が早まるわけではありません。むしろ体に負担をかけてしまう恐れがあります。とくに、1日に5回以上も繰り返し湯治を行うと、心臓や内臓に負担をかけてしまうため注意が必要です。健康になるために始めた湯治が、かえって体の不調を招くことになるのは本末転倒です。適切な回数を守ったうえで、無理のないペースで行いましょう。

湯治宿と普通の温泉宿の違い

湯治宿と普通の温泉宿の違い

湯治を行う場所として「湯治宿」が定番ですが、似ているスポットに「温泉宿」があります。それぞれ、どのような違いがあるのかを見ていきましょう。

湯治宿の特徴

湯治宿は、文字通り「湯治」を行うために提供されている宿のことです。長期的に滞在することが前提の宿であり、1泊あたりの宿泊料金が安価に設定されている傾向にあります。

また、健康的な食事を提供していたり、自分で食事にこだわりたい方向けに自炊スペースが設けられていたりすることも多いです。

普通の温泉宿との違い

湯治宿と温泉宿の大きな違いは、観光目的か否かです。湯治宿は湯治を行うことを前提に提供しているのに対し、温泉宿は観光目的で近隣へ訪れた旅行客向けに宿泊場所を提供しています。そのため、後者は名産品を食事に取り入れていたり、ホスピタリティやサービスを重視していたりすることが多いです。

また、温泉宿は数泊程度の短期滞在がほとんどであり、1泊あたりの費用も高い傾向にあります。

湯治宿選びのポイント

湯治宿を選ぶ際には、食事のメニューや周辺の地域に注目してみるといいでしょう。心身を回復させるわけですから、食事もそれにふさわしいものを提供してくれるような湯治宿がベストです。カロリーは控えめで、塩分も少なめであるのはもちろんのこと、野菜や魚を豊富に取り入れているなど、体が喜ぶ食事を提供してくれる宿を選びましょう。

また、湯治を行っていない時間に充実した過ごし方ができるよう、周辺に観光地があったり、自然豊かな場所があったりと散策できるような宿もおすすめです。

湯治のやり方と注意すべきポイント

湯治のやり方と注意すべきポイント

ここからは、湯治のやり方や注意点について解説します。

正しく行うためにも、以下の内容を参考にしてみてください。

正しい湯治のやり方

湯治の正しいやり方は、1日3回ほど温泉に浸かることです。ただし、1回あたりの入浴時間は15分程度におさえ、長風呂はしすぎないようにしましょう。

次の湯治を行うまでの空いた時間は、なるべく休息にあてたり、ゆっくりと周辺を散策したりするなど、負担のない範囲で自由に過ごしてください。

湯治で注意すべきポイント

湯治を行う際には、水分補給を忘れないようにしましょう。入浴中に汗をかいて脱水症状に陥ってしまうリスクがあります。

また、何度も入浴を繰り返すため、肌の油分が過剰に洗い流されてしまうことも考えられるため、保湿もしっかりとしてください。

湯治の効果を最大限に活かすコツ

湯治の効果を最大限に活かすためにも、温泉の成分は事前にしっかりとリサーチしておきましょう。温泉によって含まれる成分には違いがあります。当然、改善が期待できる症状にも違いがあるため、あらかじめ「どのような症状が気になるのか」「どこの温泉であれば改善が期待できるのか」をリサーチしておきましょう。

湯治を避けるべきタイミング

湯治を避けるべきタイミング

湯治を行うにあたり、避けたほうがいいタイミングがあります。健康への悪影響を防ぐためにも、以下のポイントをおさえておきましょう。

急性疾患の場合

湯治を避けるべきタイミングとして、まず挙げられるのが急性疾患の場合です。扁桃腺炎や肺炎などの急性疾患を引き起こしているときに、温泉を利用して療養するのは好ましくありません。

身体に負担がかかり、症状が悪化するリスクがあるため注意しましょう。

妊娠中の場合

妊娠中である場合は湯治を避けることをおすすめします。妊娠中は、デリケートな時期であり、温泉成分の刺激が強く感じられる場合があります。とくに、酸性系の温泉は皮膚への負担が大きく、妊娠中の肌状況が不安定なタイミングは好ましくないといえるでしょう。

その他の注意すべき疾患がある場合

湯治を避けるべきタイミングについて、注意すべきなのが「禁忌症」と呼ばれる疾患があるときです。上記で触れたような急性疾患のほかにも、急性感染症も避けるべき症状です。チフスや赤痢などを患っているときには、湯治は負担となることが考えられるため、体調が改善するまでは避けておきましょう。

湯治が効果なしといわれる理由

湯治が効果なしといわれる理由

湯治にはさまざまな健康効果が期待されている一方で「効果なし」といった声もあります。古くから親しまれてきた湯治は、その健康効果の高さから今日まで続いてきた慣習の一つです。もちろん、一切の効果が期待できないといったことはありません。

それでもなぜ、効果がないといった意見があるのでしょうか。本項からは湯治が効果なしといわれる具体的な理由を見ていきましょう。

期待される効果と実際の効果にギャップがある

湯治が効果なしといわれる理由には、想像と実際の効果のギャップ差が挙げられます。「劇的に改善する」といった期待を抱いていたにもかかわらず、実際には体調が良くなる程度だった、といった状況では効果がないと感じる方もいるでしょう。

基本的に湯治は医学ではないため、急激に症状が良くなることはない点を頭に入れて、温泉で療養することが大切です。

個人差による効果の違いがある

湯治の効果には個人差があります。そもそも湯治で改善しやすい症状と、改善しにくい症状がありますし、本人が持つ自然治癒力の高さでも効果の差は表れるでしょう。実際、湯治を始める段階では、人それぞれ自然治癒力の高さには差があります。

もともと自然治癒力が高い方は、湯治による効果は実感しにくいかもしれません。一方、自然治癒力が低めの方は、体感的にその効果を感じやすい傾向にあります。

湯治に効果なしという方の中には、もともと自然治癒力が高く効果を実感しにくかった、といった方も少なくありません。こうした個人差によって、効果を実感しにくかった方が「効果なし」として意見を挙げているケースもあるのです。

誤った湯治方法を行っている

湯治には効果がないといわれる理由の一つに、「そもそもやり方が間違っていた」といったケースもあります。湯治は正しく行ってこそ、本当の効果を発揮する療法です。誤った方法では、本来の効果を受けられなかったり、かえって体調を悪くしてしまったりするなど、さまざまな問題が生じます。

湯治の効果を得るためにも、どのような湯治が効果的であるのかを理解し、正しく行うことが重要です。決して自己流ではなく、情報収集を徹底したうえで正しい手順を踏んで行いましょう。

まとめ

湯治の効果や効能、実施すべき期間

本ページでは、湯治の効果や効能、実施すべき期間などについて分かりやすく解説しました。

湯治は効果なしといわれることもありますが、正しい方法で適切に行えば十分に効果が期待できる療法の一つです。だからこそ、適切な方法を理解したうえで行う必要があります。

また、湯治は必ずしもすべての症状におすすめできる療法ではありません。疾患のタイプによっては、避けたほうが良いケースもあります。

安全に湯治を楽しむためにも、正しい方法を理解したうえで計画を立ててみてはいかがでしょうか。