ラドンガスは体に良い? 温泉療法との関係を徹底解説
2025-04-16

温泉と健康について調べていると、「ラドンガス」という言葉を目にすることがあります。しかし、一体それは何なのか、どんな性質を持ちなぜ健康に良いとされるのかは、あまり知られていないのが実情です。
ラドンガスは、特定の温泉に含まれる微量な放射性物質であり、「ラドン温泉(ラジウム温泉、放射能泉)」として親しまれています。
本記事では、ラドンガスの性質や体への作用、安全性や温泉療法との関係について、科学的な視点からわかりやすく解説します。ラドン温泉(ラジウム温泉、放射能泉)にご興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
ラドンガスとは
ラドンガスと温泉療法との関係を知るために、まずはラドンガスが何なのかを解説していきます。ラドンガスは、どのような物質で、なぜ健康と関係があるのか、その正体を見ていきましょう。

ラドンとは
ラドンが生まれる仕組み
ラドンは、自然界に存在する放射性のガスの一種です。地中に含まれるウランが時間をかけて変化を繰り返す過程で発生します。
ラドンの成り立ちをたどると、もとは地殻中に広く存在するウランにたどり着きます。ウランは非常にゆっくりとしたスピードで壊変を繰り返し、いくつかの段階を経てラジウムに変わり、さらにそこからラドンへ変化していきます。ラジウムは鉱物で固体、ラドンはガスで気体です。
ラドンはもともと岩石や土壌の中にあるラジウムが崩壊することで生成され、それが地下水や温泉水に溶け込んで地表へと運ばれます。特に花崗岩の多い地域では、ラドンを豊富に含んだ温泉が湧き出しやすいといわれています。
ラドンガスが体内に入った時の動き
ラドンガスは温泉として使用されますが、ラドンガスが体内に入ると、どのように働きどこへ運ばれていくのでしょうか。
体内に入ったラドンは、わずかながらも放射線の一種であるアルファ線を出します。アルファ線は到達距離が非常に短いため、近くの細胞にだけ強く作用し、生理的な刺激を与えます。
また、ラドンは油分に溶けやすい性質(脂溶性が高い)のため、内分泌系や神経系など脂肪を多く含む組織に一時的に集まりやすい性質があります。
ただし、ラドンは化学的に安定していて他の物質と反応しにくい性質ももっています。ラドンは体内に長くとどまることはなく、およそ15〜30分ほどで半分が排出されます。その短時間のあいだに、局所的な作用をもたらすのが特徴です。
ラドンガスがもたらす生理的な作用とは
ラドンガスは自然界に存在する放射性物質のひとつですが、その微量な放射線が体に与える影響に注目が集まっています。ここでは、こうしたラドンガスの体内での作用メカニズムについて解説します。

ラドンガスの健康効果のメカニズム
ラドン温泉が注目される背景には、放射線がもたらす低線量刺激による生理的な反応があります。ごく微量のラドンガスを取り込むことで、私たちの体にどのような変化が起きるのでしょうか。
抗酸化作用
ラドンを吸入すると、体内で活性酸素がわずかに発生します。一般的に活性酸素は老化や病気の原因といわれますが、低濃度の活性酸素はむしろ抗酸化酵素を活性化させる良い刺激として働くことが分かってきました。ラドンガスが生み出す活性酸素は、生活習慣病の予防や、老化の進行を抑える可能性が期待されています。
抗炎症作用
慢性的な痛みや炎症を抱える方にも、ラドン温泉は選ばれています。神経性疼痛や関節リウマチなどの症状が、ラドンによって和らぐ例が報告されており、これは免疫細胞の活動やサイトカイン(炎症に関与するたんぱく質)のバランスに影響を与えることによると考えられています。
免疫調整作用
ラドンには免疫機能の過剰反応を緩やかに整える可能性があると考えられています。
たとえば関節リウマチや全身性エリテマトーデスは、免疫機能が過剰に反応してしまい、自分自身の細胞を攻撃してしまうために起こります。まだ研究段階ではあるものの、こうした仕組みで起こる病気(自己免疫疾患)に対して、ラドンガスが免疫機能を緩やかに調整することで症状を軽減する可能性があります。
ラドンガスを活用した温泉療法とその可能性
ラドンガスを含む放射能泉は、特定の病気に対する適応が環境省の通知に示されており、温泉療法の一つとして実際に活用されています。さらに、他の病気や心身の不調にも期待が寄せられています。ここでは、ラドンガスの作用が注目されている症状への効果について紹介します。

ラドンガスを含む放射能温泉の適応症
ラドンガスを含む温泉、いわゆる放射能泉は、特定の疾患に対して温泉療法としての有効性が示されつつあります。環境省の通知では、高尿酸血症、関節リウマチ、強直性脊椎炎がラドン温泉の適応症として明記されており、現在もその作用機序や臨床効果に関する研究が続けられています。
高尿酸血症(痛風)
高尿酸血症は、血液中の尿酸値が高くなりすぎた状態で、放置すると痛風発作や尿路結石、腎機能の低下を引き起こす可能性があります。最近では心血管疾患や脳血管障害との関連性も報告されています。
ラドンガスを含む温泉に入浴すると、温熱効果や微量放射線の作用により体内の代謝が促され、尿酸の排出がスムーズになると考えられています。こうした自然な代謝促進作用によって、体内の尿酸濃度をコントロールしやすくなることが、ラドンガスの効能として注目されています。
関節リウマチ
関節リウマチは、関節を覆う滑膜に慢性的な炎症が起こり、やがて軟骨や骨を破壊してしまう自己免疫疾患のひとつです。日常生活にも大きな影響を及ぼす病気で、症状の進行を抑えるためには炎症のコントロールが欠かせません。
ラドンガスを含む温泉に浸かることで、身体が温まり血行が促進されるとともに、ラドンガスの微量放射線が体内で穏やかな刺激として作用し、免疫機能の過剰な反応を抑えるといった働きが期待されています。実際に、ラドン温泉の入浴後に関節リウマチの患者さんの、関節のこわばりや痛みが軽くなったと感じる人がいるなど注目が集まっています。
強直性脊椎炎
強直性脊椎炎は、主に脊椎や骨盤周辺の関節に炎症が起こることで、関節の動きが制限されていく進行性の病気です。国の指定難病でもあり、若い世代で発症することも少なくありません。
正確なメカニズムはまだ明らかになっていませんが、ラドンガスを含む放射能温泉の入浴は、体の深部まで温め、血流を改善することで筋肉のこわばりを緩和し、関節の柔軟性をサポートするといわれています。また、痛みや炎症を抑える可能性についても研究が進められています。強直性脊椎炎の根本的な治療ではないものの、生活の質を維持するためのセルフケア手段として期待されているのです。
ラドンガスに期待される効果
上記の適応症以外にも、さまざまな病気の症状や健康の改善がラドンガスを含む温泉に期待されています。
気管支喘息の症状の緩和
ラドンガスを含む温泉地は、空気が清浄で湿度が高いため、呼吸器系に優しい環境といえます。気管支喘息の患者にとって、このような環境は気道への刺激を減らし、呼吸を楽にする効果が期待されます。
そして、ラドンガスの微量放射線が体内で穏やかな刺激として作用し、自律神経のバランスを整えることで、気道の過敏性を抑える可能性もあります。こうしたことから、ラドンガスを含む温泉によって喘息の症状が軽減することが期待されています。
消化器の病気の改善
温泉水では、胃粘膜の血流を改善し、炎症を抑える効果があると見る専門家もいます。ラドンガスを含む温泉水は飲むことが可能なため、体内に摂取することで胃粘膜の血流が調整され、胃潰瘍や慢性胃炎といった消化器病の症状が改善される可能性があります。
精神系の病気への作用
温泉は通常の水道水を使った入浴よりもリラクゼーション効果が高く、ストレスの軽減や睡眠の質の向上がみられるようです。一部の研究では、ラドンガスを含む温泉に入浴することで、コルチゾールというストレスホルモンが減少し、心身の緊張がほぐれやすくなるとされています。
さらに、ラドンガスの微量放射線が脳内の神経伝達物質に良い影響を与えることも一部の研究で報告されています。ラドンガスが神経伝達物質のバランスを整えることで、うつ病や不安障害などの精神的な症状の改善にも効果が期待されているのです。
ラドンガスの安全性
ラドンガスと聞くと、「放射能」という言葉から不安を感じる方も少なくありません。しかし、放射線のすべてが危険というわけではありません。ここでは、放射能に対する一般的なイメージと、実際に私たちの生活における放射線の利用について見ていきましょう。

放射能に対するイメージ
放射能に対する不安の多くは、過去の悲劇的な出来事が関係していると考えられます。原爆の投下や原発事故によって生じた健康被害や環境汚染が強く記憶に残り、「放射能」という言葉自体に危険な印象を抱く人は少なくないでしょう。
また、放射線は目に見えず臭いもありませんので、「気がつかないうちに被ばくするのでは・・」といった漠然とした不安を抱きやすいのかもしれません。さらに、放射能汚染などという言葉がメディアで繰り返されてきたことが恐怖を助長する一因となっている可能性もあります。
放射能は日常的に使用されている
実は私たちは日常的に放射線の恩恵を受けています。病院でおこなわれるレントゲン検査やCTスキャン、がん治療の放射線療法などは、放射線を制御して利用する医療技術の代表例です。放射線は適切な量で用いられれば、体に害を与えるどころか命を救う手段となります。
医療分野以外でも放射線は幅広く使われています。食品の殺菌や貯蔵、空港のX線手荷物検査機、家庭用の火災報知器などにも微量の放射性物質が使われています。正しく管理されている限り、放射線は安全で便利な技術として私たちの生活を支えています。
ラドンガスを含む温泉は安全か?
では、ラドンガスを含む温泉は、放射線が安全な量や状態なのでしょうか。
一般に、健康への影響が懸念されるのは150ミリシーベルト以上の被ばくとされ、放射線被ばく線量が150ミリシーベルト以上でがんが発生するリスクが上昇することが分かっています。一方、ラドンガスを含む温泉は、たとえば秋田県の玉川温泉で0.3~0.5マイクロシーベルトとごくわずかな放射線量です。入浴を日常的に入浴したところで危険性はないといえるでしょう。
ラドンガスを含む温泉の「ホルミシス効果」
また、微量の放射線が逆に身体に良い影響をもたらすことがある、という「ホルミシス効果」という考え方があることをご存じでしょうか。
ホルミシス効果とは、わずかな刺激が生体にとって良い作用を引き起こすという現象で、植物や昆虫の世界では古くから観察されてきました。
これが放射線においても当てはまるのではないかと注目されています。ラドンガスから放出されるごく微弱な放射線が、体内の抗酸化酵素の働きを促し、老化抑制や免疫調整に関わる可能性があるとする研究もあります。もちろん、すべてが解明されているわけではありませんが、健康維持を目的にラドン温泉を活用するという考え方は、科学的にも一定の裏付けを得つつあります。
ラドンガスを含む温泉の楽しみ方
ラドンガスを含む温泉は、適切な利用方法を守ることで、安全かつ効果的に健康増進が期待できます。ここでは、効果的な入浴方法や飲泉・吸引といった利用法についてご紹介します。

効果的な入浴方法
入浴の時間と回数
ラドンガスを含む温泉では、午前9時頃と午後9時頃の1日2回の入浴が勧められます。ポイントとして、朝の入浴は熱めに短く交感神経を刺激し、夜はぬるめのお湯でゆったりと浸かることで、副交感神経を優位にします。
体調に異変を感じたら入るのをやめる
高熱や出血、進行した悪性腫瘍、重い心肺・腎疾患などがある場合は温泉療法の禁忌とされています。異変を感じた際には無理をせず、入浴を中止し、医師に相談のうえ安全を最優先に判断しましょう。
継続的な入浴:湯治の考え方
ラドンガスを含む温泉の効果を最大限に引き出すためには、継続的な入浴が重要です。伝統的な湯治では、7日間を1セットとして、2~4セットを繰り返します。現代では2泊3日などの「プチ湯治」も人気です。
ラドンガスを含む温泉の入浴以外の楽しみ方
飲む:飲泉
ラドンガスを含む放射能泉は、温泉水を飲む楽しみ方があります。いわゆる「飲泉」です。温泉成分を直接体内に取り込むことができ、消化器系の健康維持や新陳代謝の促進が期待されます。ただし飲泉は適量を守ることが大切です。
吸う:吸引
ラドンガスは気体ですので呼吸を通じて体内に取り込むことができます。最近は、専用の吸入室を備えた施設や装置でラドンを効率的に吸引することも可能です。吸引によるラドンの取り込みは、免疫力の向上や自然治癒力の促進に寄与するとされています。
まとめ
ラドンガスを含む温泉は、特定の疾患への適応症だけでなく、免疫や代謝、自律神経に働きかけることで幅広い健康効果が期待されています。放射線量は非常に微量で、正しく利用すれば安全です。
入浴や飲泉、吸引などさまざまな方法で楽しめるラドン温泉を、日常の健康管理に取り入れてみてはいかがでしょうか。科学的な根拠が少しずつ蓄積されつつある今こそ、実際に体験してみて、自分の体で感じてみる価値があるかもしれません。