ラドン温泉とは、自然放射性のガスであるラドンが溶け込んでいる温泉のことです。ラドン温泉には、血行促進、免疫力向上、痛みの緩和などの効果が期待できます。そのため、慢性的な病気や疲労に悩む人にとっては、湯治に最適な温泉といえるかもしれません。
ただし、ラドンの温泉には注意点もあります。この記事では、ラドンの温泉の効果や特徴について解説します。ラドンの温泉に興味がある方、湯治に関心がある方はぜひ参考にしてください。
なぜラドンの温泉は湯治に良いのか
湯治とは、温泉地に長期間滞在して温泉の成分や自然の力を利用して、病気や体調の改善を目指すことです。そして、ラドンの温泉は、その湯治に良いといわれています。
ラドンの温泉は、さまざまな病気に対する効果が期待できるとされています。たとえば、関節痛や神経痛、高血圧や糖尿病、アレルギーや喘息などがあり、ラドン浴による湯治は、ヨーロッパでは保険が適用されるほどです。
ロシアでは1960年代からラドン泉療法が行われており、世界的に研究が進んでいます。日本でも小泉元胤氏や今津三郎医学博士などがラドンの研究に先駆けて、日本ラジウム医療研究所を設立しました。その後、ラドンを人工的に作る装置の開発が進みます。
ラドン浴は、体の内側から健康になる温泉療法です。ラドンの温泉では、ラドンの量を適切に調節できるため療養に適しています。そのため、長期間入浴することでより効果が期待できます。
ラドンの温泉の特徴
ラドンというのは自然にある放射性のガスで、このガスを含んだ温泉がラドンの温泉です。ラドン発生装置という機械を使って、水にラドンを混ぜた人工の温泉になります。お湯にラドンを混ぜるときは、天然温泉水でも水道水でも問題ありません。
天然温泉水にラドンを混ぜたものが、天然ラドン温泉です。この温泉は、ラドンだけでなく他のミネラルも含んでいるため、その分の効能が期待できます。
ラドンの温泉は浴室の空気中にもラドンがあるため、「吸う温泉」とも呼ばれます。ラドンガスを呼吸や皮膚からラドンを体内に取り入れることで、さまざまな健康効果が期待できることが特徴です。ラドン療法は、効果的な温泉療法として注目されています。
海外のラドン浴湯治
ラドン浴は、ヨーロッパでは健康増進や病気の予防・治療に効果があるとされています。ラドン浴の歴史は古く、1926年から世界各地で研究が行われてきました。
オーストリアのバードガスタインは、世界的に有名なラドン浴の地です。ここには、金鉱山として使われていた坑道があります。この坑道は、第2次世界大戦中に捕虜たちが働いていたときに、彼らの健康が改善されたという話が伝えられました。
その後、坑道内に高濃度のラドンがあることが発見され、1952年からラドン浴療法が始まったのです。現在では、がんやリウマチなどの患者や、予防や美容のために訪れる人が多くみられます。
ラドン浴は、オーストリアやドイツでは自然療法や坑道療法として認められ保険適用です。そのためバードガスタイン廃坑の近くには、ホテルやクリニックがあり、医師の指導のもとでラドン浴を受けられます。
ラドンの温泉の効果
ラドンの温泉は、放射線が細胞に良い影響を与えるホルミシス効果を利用した温泉です。放射線は過剰に浴びると危険ですが、少量なら細胞を刺激して活性化させられます。このことにより、体の代謝が向上し、病気に対する抵抗力が強くなります。
ラドンの温泉には、温泉そのものの温熱効果とラドンの放射線効果の二つがメリットです。温泉に入ると、体温が上がり血液の循環が良くなります。また、ラドンは皮膚や呼吸から体内に吸収され体内でイオン化作用を起こし、細胞の働きを正常化させます。
入浴中はゆっくりと呼吸からもラドンを取り入れましょう。ラドンは体内で熱を発するため、老廃物の排出や血流の改善がさらに促進されます。
また、ラドンの活性酸素を除去する作用も見逃せません。活性酸素は、細胞や血管を傷つけたり、がんの原因になったりするといわれています。活性酸素を除去する作用が加わり、さまざまな病気の予防や治療効果に期待ができるのです。
ラドンの温泉の入浴時の注意点
ラドンの温泉に入浴するときは、いくつかのポイントに気をつけてください。
ラドンの温泉は、血圧や心拍数に影響を与える可能性があります。持病がある方は入浴前に医師に相談しておきましょう。また、ラドンは放射線を発するので、長時間の入浴はなるべく避けてください。
入浴前
入浴は身体に負担がかかります。そのため、入浴前には食事や飲酒を控えましょう。食事や飲酒をすると、血液の流れが悪くなり、入浴による温度変化に耐えられなくなる可能性があります。
また、体が疲れていないことを確認してください。疲労が溜まっていると、入浴による刺激が強くなり、体調を崩す恐れがあります。脱水にならないように、入浴前に水分を摂っておくことがおすすめです。
入浴中
まず、入る前には身体を洗って、手足から徐々に温まってから浴槽に入りましょう。入浴中にもし気分が悪くなったら、我慢せず中止してください。最初は3〜10分程度、問題なければ20分程度入浴しても大丈夫です。
浴槽から出るときはゆっくり立ち上がって、立ちくらみを起こさないように注意してください。入浴によって血管が拡張し、血圧が下がるので、急に立ち上がるとめまいや失神を引き起こすことがあります。
入浴後
入浴後は身体についた温泉成分を水で流さずに、タオルで軽く拭いてください。水で流すと、温泉成分の効果が減少することがあります。
その後は30分ほど休んでむと、効果が現れてきます。このとき、水分補給しておくことも大切です。入浴後は身体が温まっているので、冷たい飲み物や食べ物は避けましょう。冷たいものを摂ると、身体の温度が下がり、血管が収縮し、温泉の効果が損なわれることがあります。
ラドン浴の感覚は、最初のうちは1日に1〜2回までがおすすめです。慣れてきたら徐々に増やして3回ぐらいまでにしましょう。
ラドンの温泉は危険?
ラドンの温泉では、ラドンが水から気化して空気中に拡散し、呼吸することで体内に取り込まれます。ラドンからは放射線が出るため、健康への影響がないか不安になりますよね。
ラドンの温泉で浴びる放射線の量は僅かなため、危険ではありません。むしろ、少しの放射線が体の免疫力を高めたり、血行を良くしたりするホルミシス効果が期待できます。
ラドンとは
ラドンとは、放射性物質の一種で、ガスの状態で存在します。自然界にも存在しますが、人工的に生成することもできます。ラドンはウランやトリウムという放射性物質から生まれかわったものです。
ウランやトリウムは放射線を出しながら、次々と別の物質に変わっていきます。ウランは14回の変化を経て最終的に鉛になります。この過程で5回目に出てくるのがラジウムという放射性物質です。
ラジウムはさらに変化してラドンになります。ラドンは個体ではありません。ガスなので、空気や水に存在できます。この特性を活かしたのがラドンの温泉です。
ラドン被ばくによる健康へのリスクは?
ラドンは空気中に拡散したり、土や石などの建材から放出されたりして、私たちの周りに広く分布しています。ラドンは、私たちの身近な放射性のガスです。α線を放出するため、肺に吸い込まれると内部被ばくの原因となります。そのため、室内のラドン濃度が高い場合には、肺がんのリスクが増加するといわれています。
ただし、ラドンは身体に入ってもすぐに別の物質に変わったり、排出されたりするため長く体に残りません。
ラドンの温泉は、ラドンを含む水を人工的に噴出させています。ただし、ラドンが出す放射線は自然界にある放射線よりも少ない量です。また、ラドンの温泉は、ラドン以外の放射性物質を含まないため、α線以外の放射線による被ばくはありません。
ラジウム温泉との違い
「放射能泉」というのは、微量の放射線を含んだラジウム温泉になります。ラジウム温泉は、地下の岩石から溶け出した放射性物質を含む天然の温泉です。一方、「ラドン温泉」や「トロン温泉」というのは、人工的にラドンやトロンという放射性ガスを発生させる設備の名称で、商標登録されています。
ラジウム温泉は、ラドンだけでなく、トロンという別の放射性ガスも含んでいます。ラジウム温泉の被ばく量は、法で定められた被ばく限度の100倍以上にもなる場合がありますが、温泉に入る時間や頻度が限られているため、健康被害に至ることは稀です。
ラジウム温泉には、ミネラルと放射能の両方の効果があり、痛風や高血圧などの病気に良いと言われています。
ラドンの温泉で湯治するための楽しみ方
ラドンの温泉は、入浴、吸引、飲泉の3つの方法で楽しめる温泉です。
ラドンは皮膚や呼吸器、消化器から体内に吸収され、身体の内側から効果が現れます。
入浴
入浴によるラドンの楽しみ方は、皮膚から取り入れることです。皮膚から体内に入ったラドンは血液にも吸収され、全身に広がります。また、温泉に入ることで、体温が上がり血流が良くなります。
代謝が高まり老廃物が排出されるため、健康や美容に対して効果が期待できる健康法です。
吸引
ラドンの温泉の効能は、ラドンを呼吸することで最も発揮されます。ラドンは呼吸器から直接血液に取り込まれ、細胞の活性化や免疫力の強化に働きます。
ラドン吸引専用の施設もあり、代表的なものがホルミシスルームです。ラドンを吸う健康法も、ラドン浴といわれています。
飲泉
ラドンの温泉は飲むことでも楽しめます。飲むことでラドンは消化器鼓膜から直接血液に取り込まれます。ただし、飲泉に適さない場合もあるため、必ず確認してください。
温泉はミネラルを豊富に含んでいるため、胃や腸の働きを改善します。ラドンを飲むことで、風邪をひきにくくなったり、睡眠の質が向上したりすると言われています。
まとめ
ラドンの温泉は、自然放射性のガスであるラドンが溶け込んでいる人工の温泉です。血行促進、免疫力向上、痛みの緩和などの効果が期待できます。
ラドンの温泉には注意点もありますが、適切に利用すれば健康や美容に良い影響を与えられます。ラドン浴は、ヨーロッパでは効果が認められて、保険が適用されている温泉療法です。
ラドンの温泉は、入浴、吸引、飲泉の3つの方法で楽しめます。ラドンの温泉に興味がある方は、ぜひ一度試してみてください。