ラジウム温泉が身体に良いと聞き、利用を考えている方も多いのではないでしょうか。実際、ラジウム温泉は様々な病気や体調不良などに効果があるといわれ、全国に多くの施設が存在します。
しかし、ひとくくりにラジウム温泉といっても、「天然ラジウム温泉」と「人工ラジウム温泉」があるのをご存知でしょうか。これらには共通点だけでなく異なる点もあるので、しっかり違いを理解して利用することが大切です。
今回の記事では、天然と人工それぞれのラジウム温泉の特徴や違い、効能や注意点などについて、詳しく解説していきます。天然ラジウム温泉と人工ラジウム温泉の違いが知りたい方や、これからラジウム温泉の利用を考えている方は、ぜひ参考になさってください。
天然ラジウム温泉とは、ラジウムを含み天然環境で湧出している温泉のことです。別の表現で「放射能泉」と呼ばれることもあります。
ラジウムとは、放射性元素の一種であり、物質として存在しているときは白色の金属になります。しかし、温泉水が地下でラジウムを含む鉱石を通過してくる際、元素状態のラジウムを中に多く含み、その状態で地表へと湧出してきます。天然ラジウム温泉は、このようなメカニズムで生まれます。
天然ラジウム温泉は、昔から健康や美容などに良い影響があると考えられてきました。そのため、全国各地の天然ラジウム温泉湧出地は、日本有数の湯治場として軒並み栄え、現在でも有名な温泉地となっています。
ラジウムと似た言葉にラドンがあります。ラドンとは、ラジウム鉱石から生じるガスのことです。
より簡単に言ってしまえば、形をもった状態(固体)だとラジウム、形のない状態(気体)だとラドンになると考えれば良いでしょう。また、厳密な物質は異なりますが、一部のラジウムからはトロンという物質も生じます。
天然ラジウム温泉とは呼ばれているものの、実際は固体の金属ラジウムが中に含まれているわけではなく、そこから生じた気体ラドンが含まれています。そのため、天然ラジウム温泉のことを「ラドン温泉」と呼ぶこともあります。
天然ラジウム温泉では、お湯の中に含まれたラドンが気化し、空気中にも漂います。ラドンは肌から吸収するよりも、鼻や口から吸い込む方が効率的に体内に取り込めるといわれています。そのため、入浴する際は浴室内の湯煙を吸い込むことも非常に重要です。
前述の通り、日本には数多くの天然ラジウム温泉があります。その中でも代表的なものとしては、以下のものが挙げられます。
人工ラジウム温泉とは、人の手で一般的な温泉水やお風呂の湯をラジウム温泉にしているものを指します。先述の通り、天然ラジウム温泉の場合、地中にあるラジウム鉱石を温泉水が通過しない限り、ラジウムを含む温泉が湧出しません。温泉が湧出するだけでも珍しいことですが、それにラジウムが加わるとなれば、その確率は奇跡的なものと言って良いでしょう。
また、ラジウム温泉に含まれるラドンは、どんどん空気中に蒸発していってしまうので、4日程度で元の量の半分まで減少してしまいます。そのため、遠方の天然ラジウム温泉から温泉水を運んだとしても、湯治としての利用は難しいといえます。
そこで注目されているのが人工ラジウム温泉です。人工ラジウム温泉では、ラジウム鉱石を使用した器具を使うことにより、お湯の中にラジウム(ラドン)を人工的に発生させます。
これにより、天然に湧出しているラジウム温泉に行くのが難しい場合でも、同等の温泉浴を楽しめるようになります。また、自宅の浴室で手軽に人工ラジウム温泉を作り出せる器具を使えば、毎日の入浴で湯治作用を得られるでしょう。
たとえば、東京都には天然に湧出するラジウム温泉がないため、天然ラジウム温泉に入るためには、他の道府県に行かなければなりません。しかし、人工なら器具さえあればどこでもラジウム温泉が楽しめるので、忙しくて遠方に行けない方でも安心できます。もちろん、東京都以外の天然ラジウム温泉がない地域の場合も、そして家からの外出が難しい方の場合も同様です。
人工ラジウム温泉の作り方は、非常に簡単です。具体的な作り方は使用する器具によって変わってきますが、ラジウム鉱石を含むボールなどをお風呂の中に入れ、一定時間置くのが基本となります。
お風呂の中にラジウム鉱石を入れることで、ラジウム鉱石が反応してラドンが発生し、お湯の中に広がります。そして、気化したラドンが浴室中に充満するので、それを吸い込むことでも効果が得られます。
しかし、人工ラジウム温泉を作る器具の中には、残念ながらあまり効果が得られないものも存在します。そのため、自宅などで作る際は、信頼できる業者が販売する製品を選ぶことが大切だといえるでしょう。
天然・人工それぞれのラジウム温泉は、ラジウムを含むという点では同じですが、多くの違いがあります。ここでは、それぞれの3つの違いについて、詳しく確認していきましょう。
天然ラジウム温泉と人工ラジウム温泉の1つ目の違いは、生成に人の手を加えているかどうかです。天然の場合、岩盤に含まれるラジウム鉱石を温泉水が通過することで、自然にラジウムを含みます。その結果、湧出した時点で既にラドンが発生しているので、人の手を加える必要がありません。
一方、人工の場合は湧出した温泉、あるいは一般的なお風呂のお湯に対して、後からラジウム鉱石を反応させてラドンを発生させます。
天然ラジウム温泉と人工ラジウム温泉の2つ目の違いは、浴室内を密閉する必要があるかどうかです。天然ラジウム温泉では、温泉水すべてが豊富なラドンを含んでいるので、外気にさらされていたとして、温泉の上部には気化したラドンが常に存在します。ただし、ラドンは気体の中で最も重いため、空気より下、温泉の低い部分に滞留します。そのため、立った状態などでは効率的に吸い込めない点に注意が必要です。
一方、人工ラジウム温泉の場合は、お湯の中に入れたラジウム鉱石を含むボールなどの器具で、現在進行形でラドンを発生させています。そのため、天然の場合と比べてラドンの発生量が少ないこともあり、気化したラドンを十分に溜めておくためには、浴室内を密閉する必要があります。その結果、環境によっては浴室内の居心地が悪くなる可能性があるので注意しましょう。
天然ラジウム温泉と人工ラジウム温泉の3つ目の違いは、入浴中に汗が出やすいかどうかです。天然ラジウム温泉は、一般的な温泉と比べて、浅い場所から湧き出ています。なぜかというと、深い部分でラジウムと反応してラドンを発生させたとしても、湧出の過程でラドンがどんどん揮発してしまうからです。
一般的に温泉は、深いほどに熱く、浅いほどにぬるくなります。そのため、たいていの天然ラジウム温泉は温度がぬるくなっています。その結果、入浴してもそれほどたくさん汗はかかず、じんわり体表に汗がにじんでくるような形になります。
一方、人工の場合は後からラドンを発生させるので、そのような温度の縛りがありません。そのため、入浴する方の好みに応じて適切な温度に調整できます。また、前述の通りラジウム温泉化する際に浴室を閉め切る必要があるため、湿度が高い状態になります。その結果、高い湯温と湿度により、汗が出やすい環境にできます。
天然と人工のラジウム温泉には、以上見てきたように多くの違いがありますが、共通点もあります。ここでは、それぞれの代表的な2種類の共通点について、詳細を確認していきましょう。
天然と人工のラジウム温泉はいずれも、ホルミシス効果が得られる点が共有しています。ホルミシス効果とは、本来であれば人体に悪影響を及ぼす物質が、微量であればかえって良い影響を与えることを意味します。
ラジウム温泉における、本来人体に悪影響を及ぼしかねない物質とは何かというと、ラドンです。ラドンは放射性物質の一種であり、多量に浴びれば「被ばく」状態となり、発がんなどの原因となり得ます。
しかし、ラジウム温泉に含まれるラドンは非常に微量であり、被ばくする心配はありません。むしろ、微量のラドンを浴びることで、人体は生理的な刺激を受けて活動が活発になります。その結果、ホルモン分泌や免疫向上などの効果が期待できると、科学的にも実証されています。これがホルミシス効果です。
天然・人工いずれの場合も、ラジウム温泉が含有するラドンは微量なので、入浴することでホルミシス効果が得られます。そのため、ホルミシス効果を得るために天然ラジウム温泉に行こうと考えている場合は、人工ラジウム温泉の利用も視野に入れてみると良いでしょう。
天然と人工のラジウム温泉の共通点として、どちらも飲用できる点も挙げられます。前述の通り、ラジウム温泉に含まれる微量のラドンは、人体にとって有益な存在です。そのため、天然・人工いずれの場合も、温泉水を口から飲用摂取することで、入浴と同等かそれ以上の効果を得られる可能性があります。
実際、日本では温泉というと「入浴するもの」のイメージが強いですが、海外では「飲むもの」として認識している国も多くあります。ただし、ラジウム温泉の中には、ラジウム以外にも様々な成分が含まれていることがあり、成分との相性によっては飲用に適さないものもあるので注意が必要です。
天然と人工のラジウム温泉は、どちらも入浴したり、気化したラドンを吸い込んだりすることで、同等の効能を得られます。天然・人工に共通する、ラジウム温泉の代表的な効能としては、以下のものが挙げられます。
天然・人工のラジウム温泉は、いずれも健康に良い影響を与え、病気の諸症状に効果があるといわれています。しかし、使い方を誤ってしまえば、かえって身体に悪い影響を与える可能性があります。ここでは、それぞれのラジウム温泉を利用する際、注意しておくべきポイントを3つ紹介します。
天然ラジウム温泉と人工ラジウム温泉は、いずれの場合も熱があるときや貧血のときは、入浴を控えましょう。温泉に入ることで、身体が活性化し、全身の血流が良くなります。その結果、熱があると余計に熱が高くなる危険性があります。また、貧血の場合も必要な場所からさらに血が遠のき、気分が悪くなる恐れがあります。
そのため、少しでも体調が優れないと感じたときは、天然と人工いずれの場合も、利用は控えることをおすすめします。
天然ラジウム温泉と人工ラジウム温泉は、一般的な温泉に比べると刺激が強く、湯あたりを起こしやすい点に注意しましょう。
湯あたりとは、温泉に含まれる成分が原因となり、頭痛やめまい、吐き気などの体調不良を引き起こすことです。症状から「のぼせ」と混同されることもありますが、湯あたりは温泉の成分によって引き起こされるので、単なるお湯では生じません。
ラジウム温泉に含まれるラドンは、他の成分と比べて人体に与える影響が強いといわれています。通常、その影響は人体に悪いものではありませんが、刺激が強いゆえに、入浴後に湯あたりが生じる可能性があることは覚えておきましょう。特に、妊娠中の女性や乳児の場合は注意が必要です。
天然ラジウム温泉と人工ラジウム温泉に入る際は、禁忌症にも注意しましょう。禁忌症とは、温泉への入浴や飲用によって生じる可能性がある病気・病態のことです。一般的には、以下が温泉の禁忌症といわれています。
これらは、ラジウム温泉に限った禁忌症ではないので、温泉全般の利用時に注意が必要です。禁忌症の詳細は温泉の泉質によっても左右されるので、特に天然ラジウム温泉を利用する際は、事前に禁忌症を調べておくと良いでしょう。
ここまでを読んで、ラジウム温泉を実際に利用してみたいと感じた方も多いでしょう。しかし、天然ラジウム温泉や人工ラジウム温泉の施設が近隣になく、お悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこでおすすめなのが、ご自宅で手軽にラジウム温泉を体感できる「ラドンバス」です。
ラドンバスは、天然ラジウム鉱石を原料に練り込んだラドンボールを入れた入浴グッズです。ラドンバスを入れるだけで、ご家庭のお風呂が湯治で有名な玉川温泉や三朝温泉と同様のラジウム温泉に早変わりします。
使い方は簡単で、お湯を入れた浴槽に本製品を1時間程度浸けておくだけです。その後、湯気に含まれているラドンを吸い込むことで、ラジウム温泉のホルミシス効果が得られます。また、風呂桶に入れた状態で、足湯としてご使用いただくのもおすすめです。
今回は、天然ラジウム温泉と人工ラジウム温泉それぞれの特徴や違い、効能などについて詳しく確認してきました。天然ラジウム温泉は、自然の力で湧出したラジウム(ラドン)を含む温泉です。一方、人工ラジウム温泉は、ラジウムを含む器具を使うことで、後からラドンを発生させたものを指します。
いずれの場合も、ラドンが含まれていることには変わりないので、人体にとって良い影響(ホルミシス効果)を与えます。天然ラジウム温泉は全国でも限られた場所にしかないので、より手軽にラジウム温泉浴をしたい方は、人工ラジウム温泉の利用も検討してみてはいかがでしょうか。