温泉療法の効果・効能とは?注意点や期間など解説

  温泉療法の効果・効能とは?注意点や期間など解説

旅行先で定番の温泉はリラックス効果をもたらすだけでなく、じつは「温泉療法」として病気の症状を改善する効果や、リハビリテーションの効果をもたらすといわれています。温泉療法にはどのような効果があるのか、また、温泉療法の注意や必要な期間について詳しく解説します。

そもそも温泉療法とは?

そもそも温泉療法というのは、何を指すのでしょうか?

そもそも温泉療法とは?

そもそも温泉とは?

温泉療法が何なのかを知る上で、まずは温泉の定義を確認しましょう。温泉は、昭和23年に制定された温泉法により、摂氏25℃以上、溶存物質(ガス性のものを除く)や遊離炭酸などの物質が各規定の量以上含まれていること、などと定義されています。

特に治療目的になりうるのは「療養泉」

こうした温泉の中で、特に治療の目的となり得るもので、以下の温度又は物質を有するものは「療養泉」とされています。

療養泉の温度と、療養泉に含まれる物質

●温度(源泉から採取されるときの温度)は、摂氏25度以上
●物質は以下のいずれか一つが、各規定の量以上含まれていること

  • ●溶存物質(ガス性のものを除く。)
  • ●遊離二酸化炭素
  • ●総鉄イオン
  • ●水素イオン
  • ●よう化物イオン
  • ●総硫
  • ●ラドン

出典)環境省「温泉の定義」

温泉療法とは?

温泉療法は、上記の温泉を用いておこなう治療や療養のことです。温泉療法は、古くから病気を治したり、体の調子を整える効果があるされてきました。

温泉療法には、大きく分けると二つの方向性があります。ひとつは、「狭義の医療的温泉療法」というものです。これは、温泉病院で医師の管理の下で、慢性病の治療の効果やリハビリテーションの効果を狙うものです。

温泉療法のもうひとつの方向性は、「温泉ウェルネス」と呼ばれるものです。温泉ウェルネスは、温泉を健康づくりや病気の予防や保養の効果を引き出すものとして活用するというものです。現代社会では、この温泉ウェルネスとしての温泉療法が、より大きな意味を持っており、注目されています。

温泉療法の効果・効能

病気を治したり、体の調子を整えるための温泉療法には、具体的にどのような効果や効能があるのでしょうか?

温泉療法の効果・効能

温泉療法における物理的作用

温泉療法の効果を解説する上で、まずお湯が持つ物理的な作用について解説していきます。

温熱作用

温泉療法では、体を温めることで人体に良くする効果として「温熱作用」と呼ばれるものがあります。まず、血液への作用・効果が代表的です。血液が温められることで、その血液が全身をめぐり、体の組織が全身的に温められる効果があります。

また、血管が拡張することで血流量が増えます。酸素や栄養が全身へ運ばれ、逆に二酸化炭素や痛みの原因となる物質は体の外に排出されます。こうした温熱作用がもたらす効果のメカニズムは、様々な病気のリハビリテーション医療に応用できます。

また、温泉療法で体を温めることで、血圧が低下したり、心臓への負荷が減る作用・効果もあるとされています。ほかにも、筋肉の緊張をほぐしたり、精神的にリラックスする、関節の可動域が広がる効果や、免疫系やホルモンに対しても良い効果がある、などと考えられています。

浮力作用

ヒトのからだは、水よりも比重が小さく、浮力が働いています。体にかかる負担が空気中より少なくなるため、身体に麻痺がある人、筋力が低下している人、腰痛や変形性関節症、骨折の手術後などで痛みがある人でも、比較的無理なく安全に体を動かすことができます。温泉の浮力作用・効果は各種リハビリテーションとして活用されています。

静水圧作用

水の中では、その重さの分の圧迫(静水圧)が身体にかかっています。これが身体に良い効果を及ぼします。

肩まで浸かる全身浴の場合、静水圧は下半身に最も強くかかります。下半身の血液が心臓方向へと押し上げられることで心臓へ戻る静脈の血液の量が増加し、心臓の働きが活発になる効果があります。

運動後に入浴してむくみや足の疲れをとる、というのは一般的に知られていますが、それにもこの静水圧が作用し、効果をもたらしています。

化学的作用のメカニズム

温泉療法では温泉が持つ成分が化学的に身体に作用します。代表的な化学的作用として知られているのが、血管と皮膚への作用です。

血管に対する作用、皮膚に対する作用

血管に対しては拡張する作用があります。温泉は一部の物質が皮膚を通過し血管平滑筋という部分に到達します。その結果、血管が拡張し血液の循環が良くなって、血圧が低下するという効果があります。

また、皮膚に対しては殺菌作用・効果がよく知られています。温泉には強い殺菌作用を示すものがあります。皮膚表面にある細菌が増殖することで生じるニキビや、細菌が症状を悪化させるアトピー性皮膚炎、真菌症、乾癬などに対し、温泉療法による殺菌作用が治療的な役割を果たすのです。

さらに、温泉療法で用いる泉質によっては、皮膚表面にある汚れた皮脂や古い角質をはがすことで皮膚が滑らかになる効果があるものや、漂白作用により美肌効果につながる可能性もあると言われるものもあります。

飲泉による効果

「飲泉」とは、温泉水を飲むことです。薬の有効成分として化学物質がありそれを服用するのと同じように、温泉療法では、温泉水を飲むことでそこに含まれる化学物質が身体に良い効果を及ぼすことが知られています。

たとえば、炭酸水素塩泉には、炭酸水素ナトリウム(重曹)が含まれていますが、これを飲むことで、胃酸が中和され、十二指腸潰瘍などを改善する効果があるとされています。

また、二酸化炭素泉に含まれる二酸化炭素は血管を拡張し、血液の循環を良くする効果があります。二酸化炭素は、ぜん動運動と呼ばれる腸の動きを活発にする効果もあるため、食欲がなくなっている人の食欲を増進させたり、胃腸の機能が弱っている人において有用とされます。

さらには、鉄が含まれる含鉄泉を飲むことで鉄欠乏性貧血の症状を改善させる効果もあるのです。

泉質ごとの効果

温泉療法では、温泉に含まれている化学成分による分類(泉質)ごとに、それぞれ異なる特徴や効果が存在します。そのひとつひとつを解説していきます。

塩化物泉

塩分物泉に浸かると、塩分が身体を覆うことで汗腺が塞がれ、湯上がり後に保温効果があります。このことから塩化物泉は「熱の湯」と呼ばれることもあり、末梢循環障害に効くとされます。

  • ●浴用の適応:切り傷、やけど、皮膚乾燥症、末梢循環障害、冷え性、うつ状態など
  • ●飲用の適応:慢性消化器病、慢性便秘など

炭酸水素塩泉

炭酸水素塩泉のうち、カルシウムやマグネシウムなどを多く含んでいるタイプは、皮膚の炎症を抑えたり、鎮静効果があるため、アトピー性皮膚炎や乾癬などのアレルギー性疾患や、じんましんなどに良いとされています。

  • ●浴用の適応:切り傷、やけど、皮膚乾燥症、冷え性など
  • ●飲用の適応:慢性消化器病、糖尿病,高尿酸血症など

硫酸塩泉

ナトリウムが多いタイプは、保温と殺菌の効果が優れており「傷の湯」とも呼ばれます。カルシウムが多いタイプは、痛みや炎症を和らげる効果が強く、マグネシウムが多いタイプは血管を拡張して血行を促進する効果があるとされます。

  • ●浴用の適応:きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症など
  • ●飲用の適応:胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘など

二酸化炭素泉

炭酸ガスが皮膚に吸収血管を拡張し血行が良くなり、心臓に負担をかけずに血行促進が可能となります。

  • ●浴用の適応:きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症など
  • ●飲用の適応:胃腸機能低下など

含鉄泉

鉄分を含むために飲用の泉質別適応症として鉄欠乏性貧血があります。また、古くから、婦人科の病気(更年期障害、月経困難症、貧血など)の症状を改善する効果があるとされてきたことから「婦人の湯」と呼ばれることがあります。

  • ●浴用の適応:なし
  • ●飲用の適応:鉄欠乏性貧血

硫黄泉

硫黄泉は殺菌効果が高く「皮膚病の湯」とされ、皮膚の病気に幅広い適応があります。

  • ●浴用の適応:アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症など
  • ●飲用の適応:耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症など

酸性泉

酸性泉は、黄色ブドウ球菌に対する殺菌効果が強いとされています。

  • ●浴用の適応:アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症など
  • ●飲用の適応:なし

放射能泉

放射能泉は、ラドンを多く含む温泉で、通称「ラジウム泉」です。放射能という名前から、がんの原因になるのではないかというネガティブなイメージを想起する人もいるかもしれません。

しかし、放射能泉に含まれる放射能は、発がん性があるほどの量ではなく、ごく微量です。このレベルのごくわずかな放射能は、強直性脊椎炎に適応があるなど、免疫系に良い効果があると考えられ、人体に悪影響はなくむしろ良い効果をもっています。

  • ●浴用の適応:高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など
  • ●飲用の適応:なし

温泉療法でより効果を高める入浴方法

温泉療法では、効果をより引き出すために、浸かり方の種類やタイミングを把握することが重要です。

温泉療法でより効果を高める入浴方法

温泉の浸かり方

温泉療法の効果をより高めるために、浸かり方の種類と特徴を知っておきましょう。

全身浴

全身浴とは、体のほぼ全部分を温泉に浸かる方法です。全身浴には大きく2種類、「半座位浴」と「寝湯」があります。

半座位浴は中腰または座位で入ります。寝湯は、その名の通り、水位が浅い温泉に寝転んで浸かる方法です。

部分浴

部分浴は、全身浴と異なり、身体の一部分のみを温泉に浸かる方法です。頭部や首すじに温泉をかける「かぶり湯」、肩・首すじ・腰などに温泉を上から下に落とす「打たせ湯」、腰下または足の部分だけを温泉にひたらせる「腰湯」「足浴」などがあります。

温泉に浸かるタイミング

温泉療法の効果をより高めるためには、温泉に浸かるタイミングも重要です。

朝と夜

一般的に、入浴によるリラックス効果を得るためには、睡眠の90分前がベストと言われています。一方で、朝は副交感神経が優位になる関係で風邪に対する抵抗力が夜よりも強く、湯冷めしにくいとも言われています。

食前、食後

食事との関連では、食後より食前のタイミングで入浴する方が胃腸に負担がかかりません。また、胃腸に血液が十分に巡っていない入浴直後に食事をとると消化不良になる可能性も高まります。したがって、入浴は食事の30分以上前が良いと考えられます。

温泉療法の注意点

ここまで解説したように、温泉療法は心身に様々な良い効果をもたらしますが、正しくおこなわないと危険な場面もあります。ここでは、温泉にはどのようなリスクがあるのか、それを避けるための安全な入浴について解説します。

温泉療法の注意点

入浴中や入浴後に起こりうるリスク

ヒートショック

温泉療法において、代表的な事故は、ヒートショックです。ヒートショックとは、急激な温度変化により急激に血圧が上下することで、心筋梗塞や不整脈、脳出血・脳梗塞などの発作が起こる現象を指します。温泉は高温から低温まで様々な温度があり、外気や脱衣室との温度差もあるので、往々にしてヒートショックが起こります。

熱中症

温泉療法において、ヒートショックとは似て異なる病態として熱中症があります。温泉により体温が上昇しすぎることで、夜間や屋内であっても熱中症が起こります。

転倒

温泉療法において、ヒートショックや熱中症になると、温泉から出る時や脱衣所に移動する時に朦朧とし、その場で倒れたり足を滑らせてしまう可能性が高まります。

安全な入浴法のためのポイント

温泉療法で、安全に入浴するためのポイントを解説していきます。

禁忌

温泉には全ての泉質で禁忌とされるものがあります。温泉療法といえども、少し動くと息苦しくなるような重い心臓又は肺の病気や、むくみのあるような重い腎臓の病気などの状態の時に温泉に入ることは禁止されています。また、酸性泉では皮膚又は粘膜の過敏な人や高齢者の皮膚乾燥症は個別に禁忌とされています。

急激な温度変化を避ける

温泉療法においてヒートショックを避けるには「かけ湯」が良い効果をもたらします。かけ湯は、入浴前に身体をお湯で流すことで、衛生上のマナーという意味もありますが、温度変化を緩やかにする効果があります。

ただし、かけ湯も一気に全身に湯をかけてしまうとお湯に浸かるのと大差がなくなり効果が薄れてしまいますので、手足など体の末端から少しずつ浸けていき、最後に心臓のある胸部分を温めるのが効果的です。

お湯に浸かる時間

温泉療法で、お湯に浸かることができる時間には多少個人差はあるものの、浸かる時間の目安は、熱めの温泉の場合は1回あたり10分以内で、ぬるま湯の場合は20分以内が良いとされています。

温泉中に飲酒は危険

温泉療法において、飲酒は非常に危険です。温泉で血液の巡りが良い状態では通常問題ない量のお酒でも酔いが回りやすく意識が朦朧とする可能性があります。

温泉療法の期間

温泉療法において、温泉に入る期間はどのくらい必要なのでしょうか?

温泉療法の期間

伝統的な湯治の期間と考え方

伝統的な温泉療法に「湯治」という概念があります。湯治は、温泉地に一定期間滞在し、特定の疾病の温泉療養をおこなうことを意味します。

伝統的な湯治では、7日間を1巡(1セット)として、それを3巡する合計21日間とするのが一般的とされてきました。温泉療法の様々な作用が病気や不調を改善する効果を引き出すためには、最低でも2巡(2週間)は必要ともいわれています。

湯治に温泉療法の期間と選択肢

温泉療法は、血流の促進、殺菌、保湿などの効果がありますが、これらは1日ですぐに完全に効果して解決するというものではありません。温泉療法がアトピー性皮膚炎や冷え性、糖尿病といった慢性の病気の症状を改善する効果をもたらしたり、リハビリテーションの効果を十分に引き出す上では、温泉療法を長期に継続することが求められます。

一方で、忙しい現代社会では、長期間温泉地に滞在できないという人も多くいます。近年では、都心で新しい湯治のスタイルを体験できる施設があったり、温泉の成分をカプセル内で全身吸入できる施設もあります。現代は、こうした新しい温泉療法の形で、継続的な温泉療法の実施という選択肢もあります。

まとめ

この記事では、温泉療法の効果効能、効果的な入浴方法や注意点について解説しました。温泉療法では、泉質ごとにそれぞれ異なる特徴や効果が存在します。身体に不調を感じている方は、自分に合った泉質の温泉を見つけ、温泉療法を検討してみてはいかがでしょうか。

1日500円まずはレンタルから お申込みはコチラ